さとうしょうこの地魚と醤油の旅

鐘崎天然とらふく×マルヨシ醤油

宗像市で長年にわたり本醸造醤油をはじめ多彩な醤油をつくる 『マルヨシ醤油』。料理研究家・佐藤彰子先生が、地域に愛される自慢の 醤油を使って、地元産・天然トラフグのすき焼き『ふくすき』を紹介!

引き締まった天然トラフグの切身に、甘めの割下がさらに旨味をのせる贅沢なすき焼き
左から、再仕込み本醸造『甘露』(1112円/1L)、こいくち本醸造『本醸造まるよし醤油』(734円/1L)、こいくち混合醸造『うまくち優選』(497円/1L)
《マルヨシ醤油》 所:宗像市上八1540 電:0940-62-3322
https://www.maruyoshi-syoyu.co.jp/
樽の中で醤油の元となる諸味を1年かけてゆっくりと熟成させる
醤油麹をつくる室(むろ)。良い醤油麹を作るために温度管理が重要
国定公園・さつき松原を背景に、周囲を田畑に囲まれた静かな場所
熟成した諸味を絞る様子。じわじわと滲み出る『生揚げ醤油』は、醤油の基礎

歯応えあるフグの身にまったり纏う醤油の旨味

鐘崎漁港から車で3分とかからない場所にある『マルヨシ醤油』は黄色い看板が目印。目の前はのどかな田畑が広がり、奥には緑豊かな湯川山がそびえる。昭和23年創業。当初は鐘崎港の織幡神社付近に工場があったが、大量の水を使うことから山々の伏流水に恵まれたこの地に移ったという。

「うちは全国でも珍しい『混合醸造』をメインに『本醸造』も『混合』も、全ての方法で醤油を作ることができるメーカーなんです」と専務・吉村一彦さんが教えてくれた。醤油づくりの基本は、❶蒸した大豆と炒った小麦に麹菌を混ぜて醤油麹をつくる。❷麹に塩水を加え『諸味』をつくる。❸諸味を樽の中で半年~1年かけて発酵・熟成させる。❹熟成した諸味を搾って『生揚げ醤油』をつくる。❺生揚げ醤油を加熱(火入れ)し発酵を止め、瓶詰めする。これが『本醸造』と呼ばれる醤油づくりの基本工程だ。福岡で昔から好まれている醤油は、組合が共同で作った『生揚げ醤油』に旨味成分(アミノ酸液)を加えたもので、こうした醤油は『混合』と呼ばれる。これに対し『混合醸造』は熟成前の『諸味』に旨味成分を加えて一緒に熟成させるものをいう。旨味を加えるタイミングが熟成前か後かの違いだが、熟成前に加えるためには『本醸造』の醤油が作れる蔵でないとできない。『マルヨシ醤油』はここにこだわりを持ち、アミノ酸液も大豆から自前で作っているという。

「江戸時代からシュガーロードと呼ばれ、砂糖に恵まれた土地柄だからでしょうか、福岡の人は旨味や甘味に敏感です」。福岡の醤油蔵はそれぞれの土地に息づく繊細な味覚にこだわりを持ち、地域の味覚=自社の味として守り続ける。旨くて甘くて愛嬌もある独特な醤油文化。私たちのDNAにしっかり書き込まれ、未来につながる味覚文化として、いつまでもその味を守り続けてほしい。

自作の『醤油マン』に扮して、食育活動を行うこともある吉村さん。手作り感がイイ!

鐘崎天然とらふく×マルヨシ醤油『とらふぐのすき焼き・ふくすき』

材 料(2人分)

トラフグ切身・皮 … 8切れ
焼き豆腐 … 1/4丁 
椎茸 … 4個
結び白滝 … 2個
梅花人参 … 4切れ
春菊 … 1/3束
早生玉ねぎ … 1個
白ネギ … 1本
【A】割り下
・醤油(本醸造) … 150cc
・酒・みりん … 各100cc
・ざらめ … 大さじ5

作り方

❶トラフグは熱湯をかけ湯洗いし、ぬめり・アクを取り、皮は細切りに。
❷椎茸は石づきを取り、白滝は水気を切って梅花人参と共に熱湯で2~3分下茹で。
❸春菊は6~7cm長さ、早生玉葱は縦8等分、白ネギは斜め切り。
❹【A】を鍋に入れ火にかけ、①②③の順に加えて火が通ればできあがり。溶き卵で食べるのも美味。