水産のゲンバ  宗像の鐘崎天然とらふく

鐘崎に天然とらふく揚がる

響灘と玄界灘を分かつ鐘ノ岬のすぐそばから『鐘崎ふく延縄船団』が出航する。向かうは最長片道6時間、大島近海から対馬北東海域まで。狙うは玄界灘、対馬海流に揉まれ育った天然のトラフグ。香り・旨味・締り・歯応え良しの最高級トラフグが今年も鐘崎に揚がる。

トラフグの漁期は12月から3月までだが、本格的に漁が始まるのは1月から。12月はアラを獲っていたという松本さん。後は19トンの延縄漁船『辨天丸』
幹縄の両端に目印の旗を付けた『タンポ(浮標)』と、間を支える『小タンポ』
鐘崎にとってトラフグは大きな恵み。この資源を次世代に繋げたいと松本さん
『鐘の岬活魚センター』の田村正和さん(左)と竹浦誠さん。 問:鐘の岬活魚センター 所:宗像市鐘崎778-6 TEL:0940-62-1570
活魚センター内ではガラス張りの部屋の中で行なわれる神業の身欠きテクニックを目の当たりにできる
トラフグ資源を守るため、12月は30cm以上、1月からは35cmを超えないと漁獲しないという漁の自主ルールがある。2〜3月になればサイズも大きくトラフグ漁もピークを迎える
フグをしっかり釣り上げるため、一本一本丁寧に 針研ぎを行なうことが大事だと松本さん

福岡県最大の漁獲量を誇る宗像市の鐘崎漁港。福岡県が誇る高級ブランド魚『鐘崎天然とらふく』を漁獲する『鐘崎ふく延縄船団(宗像漁協所属)』の本拠地だ。船団の船は16〜19トン級の大型漁船が30隻近くある。船団長の松本久人さんは「昔に比べれば減りましたが、今でもこれほどの規模の船団はそうそうないのでは…」という。トラフグといえば下関のイメージが強いが、福岡県の天然トラフグのほとんどは鐘崎で漁獲され、福岡県でトラフグといえば、ここ鐘崎なのである。

漁では『浮き延縄』という、浮きで支えた幹縄からたくさんの枝針を垂らして魚を獲る。松本さんは1000本以上の針を投下する。1日に160匹釣れたこともあったとか。でも豊漁になると魚の価格が下がるので、市場に出すタイミングも難しいという。

『鐘崎天然とらふく』は約8割を下関市南風泊市場に出荷し、そこから大阪や東京の高級料理店へと送られるが、その一方で、鐘崎からも身欠き処理を行なったフグを銀座や赤坂の料理店へ送っているのが『宗像漁協 鐘の岬活魚センター』だ。ここではトラフグをはじめ、鐘崎の漁師から直接仕入れた魚介を料理店などに送るための処理から、一般向け販売まで行なっている。センター長の田村正和さんは福岡県から免許を受けた『ふぐ処理師』だ。「フグには種類によってさまざまな部位に毒があり、経験と知識を持った専門の処理師によって、食べてはならない部位を取り除くことを『身欠き』といいます」と田村さん。大きなトラフグを目にも止まらぬ速さでどんどん捌いていく。

2月、3月は『鐘崎天然とらふくフェア』が宗像市や福津市などで開催されるので、この機会にぜひ『鐘崎天然とらふく』味わってほしい。